本棚を晒す【珍本これくしょん すぺしゃる vol.20 「仮面ライダー(原作)」】

ご存じの方も多いと思いますが、今年は仮面ライダー生誕50周年記念

 

昭和から平成。平成から令和へ。さらに親から子。子から孫へと初代ライダーの意志は受け継がれ、観るものに希望を与えてきました。

 

それだけ多くの方から支持を集めたからこそ、半世紀にわたる長期シリーズを達成できたのです。

 

そこで今回は原点回帰

 

石ノ森章太郎の原作版「仮面ライダー」を振り返り、そのメッセージを探ります。

 

抜け忍
抜け忍

石ノ森先生の伝えたかったことは、なんだったんだろう。

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「仮面ライダー(原作)」の世界観・前編

全ライダーのエピソードゼロにあたる前編では、もちろん本郷猛が主役。

 

ショッカーの工作によってバイク事故に巻き込まれ、改造手術を受けた本郷猛は、常人をはるかに上回る筋力と5万ボルトの電流にも耐える無敵の肉体に生まれ変わります。

 

しかし、人類の支配をもくろむショッカーに反旗を翻し、残された脳改造の直前で脱出。仮面ライダーとして組織に立ち向かうのです。

 

前編の構成は、ショッカーの改造人間 vs 仮面ライダー

 

裏切り者の本郷猛を抹殺するため、改造人間たちが次々と襲来。

 

テレビ版との違いは改造人間 = サイボーグと言う設定。

 

怒りが頂点に達すると本郷猛の顔には術後の傷跡が浮かび上がります。

 

その傷を隠すために仮面を装着。つまり仮面 + 無敵の肉体 + バイク = 仮面ライダー

仮面の下に、怒りや悲しみを抱えて戦ったのです。

 

最大の山場は一文字隼人へのバトンタッチ。

 

新聞記者として出会った一文字隼人は、既に脳改造手術を受けていました。しかし本郷猛との戦闘中、流れ弾に被弾。

 

正気を取り戻します。

 

一方の本郷猛はショッカーの追っ手に捕まり死亡。その後は残された一文字隼人が彼の意思を受け継ぎ脳と同一化、新たな仮面ライダーとして戦うのです。

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「仮面ライダー(原作)」の世界観・後編

後編は、一文字隼人が主人公。

 

サイボーグとして戦う仮面ライダーとは何なのか。改めてそれを印象付けます。

 

さらにショッカーの遠大な計画も明らかに。

ショッカーの10月計画(オクトーバープロジェクト)
 日の下電子が10月にTVと腕時計を販売
         ↓
      多くの人々が購入
         ↓
 TVと腕時計から発する電波で人間を操作

こんな青写真で人類の支配を目論んでいました。

 

一文字隼人は計画を阻止するため、FBIの滝二郎とショッカー本部へ乗り込みます。

 

目的は電子頭脳(=電波の発信源)を破壊するため。

 

行く手をふさぐ怪人を倒し、なんとか地下の電子頭脳までたどり着いた一文字隼人ですが、待ち受ける最大の敵・ビッグマシンに苦戦。

 

機械を狂わす超音波を浴び、追い詰められます。

 

しかし最後の最後で、まさかの本郷猛が復活!

 

科学の力で甦った彼は、ビッグマシンと電子頭脳を破壊、一文字隼人を連れて脱出。ショッカーも崩壊して終劇。

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仮面ライダー(原作)が伝えたかったこと

大自然の使者として

原作では、勧善懲悪を貫きつつ、それ以外のメッセージも盛り込まれています。

巷で語られているように、改造人間の悲哀や結ばれない恋も描かれていますが、それはテーマの一部。

 

石ノ森章太郎が本当に伝えたかったこと。

 

それは文明の進歩と自然破壊

 

冒頭でショッカーを脱出した本郷猛の第一声は「大自然がつかわした正義の戦士 仮面ライダー

それまで自然を破壊する描写もなく、かなり唐突な宣言です。

 

その後も「大自然」はキーワードとして登場。

 

ちょっと「???」な展開ですが、本郷猛の一人語りで、ようやく作中のメッセージが見えてきます。

 

 

もちろん時代背景の影響も大。

1955年 富山県神通川流域にイタイイタイ病が発生
1956年 水俣湾に水俣病が発生
1961年 四日市ぜんそくが多発
1964年 新潟阿賀野川流域に水銀中毒患者を確認(第二水俣病)
1967年 公害対策基本法を制定
1971年 自然と環境の保全を目指して環境庁設立

原作版仮面ライダーが出回ったのは1971年。

 

豊かさの代償として多くの犠牲を目の当たりにした石ノ森先生は、ショッカーを自然破壊の権化仮面ライダーを自然を守る者として描きたかったんでしょうね。

 

ちなみに1974年に出版された「青いけもの」では、さらにわかりやすく自然と人間の対立が描かれています。

 

野生動物を乱獲するハンターたちに、謎の生物「青いけもの」が牙を向くシーンは正にその象徴。

図に乗るな!人間ども!」と言わんばかり。

 

生態系のピラミッドを崩すことは、人間も文明も破壊すること。

 

仮面ライダーのメッセージに通ずるものが、ここにもあります。

資本家と戦う孤独なヒーロー

一方で、ショッカーを一企業として読み取ることも出来ます。

 

元々10月計画(オクトーバープロジェクト)は、日本政府が極秘に始めたものでした。

それをショッカーが奪い取ったのです。

 

計画の遂行には資本金は勿論、労働者として任務を遂行する人材が必要になってきます。

 

その人材とは、もちろん改造人間たち。

 

異形の姿になった彼らは、ある意味資本主義の犠牲者。

 

同じように19世紀のイギリスでも、過酷な労働の犠牲者が続出しました。

引用:講談社まんが学術文庫「資本論」

産業革命の影で危険な工場勤務に就いた方々が、手足の欠損や皮膚・筋肉に大きなダメージを負ったのです。

 

巨大な資本を産み出すために改造された人間と様変わりした容姿の人々。これらは全く一緒。

 

つまりショッカーは産業革命時代から続く超絶ブラック企業

 

仮面ライダーの戦いは、彼ら残虐な資本家たちとの戦いとも言えます。

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新世紀ライダーたちの戦いと「石ノ森イズム」の行方

原作版から時を経て21世紀。新たに始まった平成ライダーシリーズは、さらに設定が複雑化。

 

特に初期の仮面ライダーアギト仮面ライダー龍騎仮面ライダー555(ファイズ)は難解で、それぞれの正義がぶつかり、お互いの存続をかけて戦うため、善悪の基準も曖昧。

 

これには2001年のアメリカ同時多発テロが深く関わっています。

アメリカ vs 中東
キリスト教 vs イスラム教

同時多発テロ以来、これらの対立が激化。それまでアメリカが布教した価値観は一気に崩れ、人々は戸惑いました。

 

その影響をモロに受けたのが「仮面ライダー龍騎」。そこに明確な正義はなく、13人のライダーたちが生存をかけたバトルは、視聴者に衝撃を与えました。

生き残りをかけて戦った「仮面ライダー龍騎」
引用:東映特撮YouTube Offcial

 

また仮面ライダー555のオープニングで歌われた “the end justifies the means(目的は手段を正当化する)” は、残虐なテロやテロへの報復を正当化するためなら手段を選ばないことを意味します。

種族の存続を描いた「仮面ライダー555」
引用: 東映特撮YouTube Official

 

これだけ暗いテイストが続けば食傷気味にもなりますが、2007年の仮面ライダー電王が「俺、参上!」の決めセリフでブレイクした後は雰囲気も一変。

「俺、参上!」で一世風靡した「仮面ライダー電王」
引用:東映特撮YouTube Official

いわゆる熱血漢や陽キャの主人公も増えてきました。

 

昭和ライダーから随分と世界観も変わりましたが、それもやむを得ません。

 

大人の視聴を意識してリアリティを追及すれば、混迷する世の中の影響を受けざるをえないのです。

 

巨大な不況、自然災害、未知のウィルス、突発的なテロetc.

 

今までとは守るべき範囲や、敵の規模も全く違います。

 

令和ライダーたちは、そことどう向き合うのか?誰の何を守るのか?或いは新たな独自路線を歩むのか?いずれも注目すべきポイントです。

 

非力で声を上げることもなく、ただただ蹂躙される自然を守った原作版には、石ノ森先生の優しい目線を感じました。

 

せめてそのイズムだけは継承して欲しいのですが、ド派手なCGやガジェットに走りがちな現状では難しいかもしれません。

(左)ロイミュードと繋がった「仮面ライダードライブ」
(右)国や人種を超えて集結した「サイボーグ009」
「異種間の交流」は石ノ森イズムの一つ

 

わかってます。ライダーが金を生むドル箱だと言うことも。ノスタルジーからは何も生まれないことも。

 

それも充分承知してますが、あえて言わせてください。

 

抜け忍
抜け忍

昔の作品は良かった…。