「時間を返して…」
これが読後の感想。
かなりの珍本ですが、読む必要は一切ありません。この記事で概要をつかめば充分。
・海底二万里のパクリ
・やりすぎ(痛々しい)
以上。
冒頭から「どんだけヴェルヌ好きなんだよ!」ってくらい、どこかで見たようなシーンがてんこ盛り。

(右) どこかで見たような現地人の素潜り
モチーフになった海底二万里では、未知なる大海原が神秘的に描かれ、大自然への敬意も感じられますが、海底五万マイルでは、そんな雰囲気はゼロ。
ネモ船長のように、崇高な使命をもったキャラクターも一切登場しません。
どこまで読んでも、少年パブリックと潜水艦ピオネール号の乗組員たちが繰り広げるドタバタ活劇。
いちいちやりすぎなんです。



イカやタコ、クジラやカニなどが襲いかかって来るまでは、なんとか飲み込めたのですが、プレシオサウルスの襲撃で完全に興ざめ。怪獣退治のような展開にウンザリ。

子どもだまし感が…。
当時はこれで良かったんでしょうね(対象年齢も小学校低学年)。
しかも最後はソビエト万歳。

「諸君、この少年をみてください。氷山の上からすくいだされた一少年を。かれはいまやソビエトのほこりとなった。わが祖国のたくさんの子どもたちの手本になった…」
この本の出版は1939年。世界大戦と社会主義真っ只中で生まれた作品なので、こんな結末になった模様(大粛清でお馴染みスターリンのご時世)。

ツ、ツマラン…
ね?読む必要ないでしょ?
「海底五万マイル」のレヴュー
値段 | ★★★★☆ | 600円。どう見てもエラー価格だったので購入。 |
内容 | ★☆☆☆☆ | 陳腐な冒険活劇。 |
遭遇率 | ★☆☆☆☆ | めちゃくちゃレア。 |
スキ度 | ★☆☆☆☆ | スキじゃありません。最後まで読み通すのは苦痛。 |
読後、改めてわかったのは海底二万里の偉大さ。

(右)新潮小説版
なんせ潜水艦と言う発想が新しい。出版当時はこんな鉄の塊が海に潜るなんてありえませんでした(1870年出版)。
科学をベースにしたヴェルヌの分厚い知識が、ノーチラス号を生み出したのです。
もちろん読み応えも充分(ネモ船長の暗い過去、神秘に満ちた海底探査etc.)。
そのインパクトがあまりにも大きかったため、その後、どんな小説を読んでも、幼少期の感動に達することは、ほぼありません。
まさか1980年代の読書体験が、今日に至るまで尾を引くとは思ってもいませんでした。
なんの先入観もなく手にした一冊は、次世代まで読み継がれる古典だったのです。