川端康成と言えば「伊豆の踊子」。


でも、全然ピンとこなくて。その後も「眠れる美女」や「みずうみ」にトライしたけど挫折。
3冊読み終えた頃には「雪国」に手を伸ばす気力も衰え、今日に至ります。

なんで、みんなありがたがってるのか解らなかったよ。
そこにきてこの作品。「川のある下町の話」。
今までにない具体的なタイトルにアンテナがビビッ!思い切って手に取ったら正解。
・戦後の都内某所が舞台
・まだまだみんな貧しかった
・いつも「死」が隣り合わせ
・義三・桃子・民子・ふさ子の4角関係で展開
ちなみに4人の相関図。

ホントはもっと複雑な感情を描いていますが割愛。
さらにキャラクター設定も絶妙なんです。
・義三:インターン生。超絶美男子。貧乏。陰キャ。
・民子:インターン生。資産家の娘。聡明。
・桃子:医者の娘。高校生。夢想家。陽キャ。
・ふさ子:薄幸の美少女。赤貧。陰キャ → ダークサイドへ。
これで面白くならないワケがない。
物語は、よせば良いのに陰キャ同士(義三とふさ子)が惹かれ合い破滅的な展開へ。互いの優しさがボタンのかけ違いへと変わり、取り返しのつかない結末を迎えます。

民子に付きまとう「死の影」が追いついたとき…あまりにも救われない生き様に胸を締め付けられます。
「川のある下町の話」のレヴュー
値段 | ★★★★★ | 100円。100円以上の価値はあるけど100円。 |
内容 | ★★★★★ | まごうことなき名作。繰り返し味わって浸りたい。 |
遭遇率 | ★☆☆☆☆ | 既に絶版。世の中絶対間違ってる。 |
スキ度 | ★★★★★ | 出会えてホントに良かった。感謝です。 |
若い方が読んだら「さっさと告れよ!」とか「何モタモタしてんだよ!」とか思うんだろうなぁ。
でも、この小説の執筆は昭和28年(1953年)。まだまだ戦争の傷跡も癒えず、街中は復興途上。仕事にありつけず賃金もない人間は、黙って死を受け入れるしかなかった時代。
そんな時に恋愛なんて、とんでもない。男女関係の優先順位は低く、みんな今日明日生きるのが精一杯。
自動的に仕事も貯蓄もない義三とふさ子の関係も進展しません。互いに惹かれ合っても先立つものが無いため、あと一歩が踏み出せないんです。
そして貧困と死はいつも隣り合わせ。
身近な死を目の当たりにするたび、ふさ子は……一応ネタバレは回避しておきます。
それまでの川端康成って、正直、何が面白いのか全く理解出来ませんでした。ロリコンでも、エキセントリックな性癖があっても一向に構わないけど、それを文字に起こして、やれ耽美だ退廃的だとか言うのは違うんじゃないって。
自身のセクシャルファンタジーが実現出来なかったから、その鬱憤を小説で晴らしているとしか思えなくて(男女関係にハードルがあった点は同情できるけど)。
どこまで読んでもフランス書院文庫の上位互換程度だし、それをありがたがって読む人の気持ちもサッパリわかりませんでした。
「川のある下町の話」を読むまでは。
180度評価が逆転した今では、謝罪あるのみ。ホントにゴメンナサイ。
こんな素晴らしい作品と出会えたことに感謝しかないのです。

出来ればリアルタイムで読みたかった!