一ミリも動けませんでした。
「AKIRA」の視聴後は、妄想が体内を駆け巡り、身体をロックされてしまったのです。

今見ても凄まじいインパクトだったよ!
あまりの完成度の高さに何度鳥肌が立ったことか!
それもそのはず。
ブレードランナーの近未来感 × シャイニングのグロテスクなビジョン × 超能力 = これでオモシロクならないワケがない!
そしてその衝撃が新鮮な内に、猛ダッシュで記事にしました。
※全ての画像は映画「AKIRA」から引用
妄想と考察 ① オープニング〜鉄雄が拘束されるまで

「AKIRA」の特徴は、なんと言っても全体を貫く疾走感。
冒頭から不良グループ同士のバイクバトルからスタート。このスピード感溢れるオープニングに、あのBGM「ラッセーラー」が重なると、どこかカルト宗教を匂わせる不穏な空気に包まれ、アドレナリンが爆増。
そしてその不穏な空気は、男性の荒い息遣いで始まるBGM「ダッダー」でピークに。ここまで来ると祭壇に生贄を捧げる禍々しささえ感じます。

狩猟民族が獲物を追い詰めるようなイメージも。
背景には近未来を思わせる巨大なビルが立ち並び、一方でスラムのような雑然とした街中も描かれ、このコントラストも非常に印象的。
こんなドロっとしたオープニングの中で拘束された鉄雄に、明るい未来が待ってないことは容易に想像出来ます。
・人類が堕落した原因は何だったのか
妄想と考察 ② ナンバーズの容姿

ナンバーズとは強力な超能力(テレパシー・テレポーテーション・念動力・透視など)を備えた子どもたちで、手の平に識別番号が印字されています。
・キヨコ(25号):予知能力を持つ少女。普段はカプセルのようなベッド過ごす。
・タカシ(26号):鉄雄と接触した男の子。二足歩行が可能。
・マサル(27号):常時イスで浮遊する男の子。
・アキラ(28号):謎のナンバーズ(後述)。見た目は若々しく老化の影響を受けていない。
アキラをのぞく三人の外見は、誰がどう見ても老い先短い老体で、まるで超能力を酷使した人間の成れの果て( or 早老症?)。

ちなみに老化のスピードも様々。
・キヨコ → ほぼ寝たきり
・マサル → イスの浮遊で移動可
・タカシ → 二足歩行で移動可
・アキラ → ほぼ幼年期のまま
アキラが完全体であることを考えれば、三人の中では二足歩行のタカシが(=老化の影響が少ない)最も力のある少年ではないでしょうか。
一方、彼らはとても脆い生命体で「僕らは外では生きていけないんだよ」のセリフから、施設から薬物などの処置を受けないと生命を維持できないこともわかります。
軍事目的で超能力を覚醒させられたナンバーズですが、あまりにも謎が多すぎます。
・超能力研究機関の規模は?
・当時覚醒した子どもたちは何人?
・既に他界した子どもたちの死因は老衰?
・超能力の運用は軍事目的だけ?(コスパが悪すぎる)
妄想と考察 ③ アキラとはなんだったのか

結論から言えば、アキラは肉体を持たない高次の精神生命体です。
登場人物の言動にもヒントが散りばめられ、
「神の力…ですか」
「アキラの力は誰の中にも存在するわ」
「(プランクトンなど)そんな生物の中にも凄いエネルギーがあるってことでしょう?」
「前に竜が言ってたわ。アキラってのは絶対のエネルギーなんだって」
いずれも人ならざるモノを予感させます。そしてその予感は地下に幽閉されたアキラを解放したことで確信へと変わります。
なぜならアキラはバラバラに解体されていたから。
それぞれのパーツごとに細かく細断、冷凍保存されていたアキラですが、テレパシーでキヨコや鉄雄に語りかけ、遥か高次元の生命体として生存していたのです。
この発想はとてもユニーク。ラヴクラフトのクトゥルフ神話に登場する暗黒神を彷彿とさせ、それを日本人の大友克洋さんが描いた点に興味津々。この発想はどこからインスパイアされたのでしょうか?

ここで冒頭の宗教的なBGMもつながってくるワケね。
物語は、力に目覚めた鉄雄と金田の戦い = 神 vs 人間の神話的なバトルに発展し、鉄雄は巨大な光に飲み込まれて消滅。
この光もアキラの力によるもので、一種の相転移だと思われます。
この光を通過することで、肉体を離れ、さらなる高みへと転移、そしてそれが最終形態になったのでは。
「これではまるで…宇宙が誕生したと言うのか!」
科学者が最後に放った一言ですが、宇宙の始まりも、全く無の状態から相転移によって熱エネルギーが発生 → ビッグバンへと発展しました。

金田が吹き飛ばされるシーンにも注目。背景の瓦礫は明らかにDNAの二重らせん。これはケイの独白と重なり、人間が猿から進化する以前、既に何らかの力を秘めていた可能性を示しています。

・強大なアキラをどうやってバラバラにしたのか
・膨張した鉄雄は異形の神ヒルコがモデル?( → 追記)
・アキラの力は先祖返り?
妄想と考察 ④ その後の世界はどうなる?

ここまでの個人的なイメージをまとめると、
・その神罰としてアキラは覚醒した
・金田とケイはネオ東京のアダムとイヴ?
冒頭のバイクシーンから壮大な広がりを見せた「AKIRA」は、この世の始まりと終わりを告げる神話的な展開へ発展、視聴者の脳内に爆発的な妄想をブチまけて終わります。
ただ、ここでも疑問が。
アキラの消滅と供に東京は灰燼と化し、人類は新たなステージへ向かうのでしょうか?そして「もう、はじまっているからね」の意味する世界は一体どうなるのでしょうか?

妄想が止まらん!
第二第三の鉄雄が生まれたなら、それは世界の壊滅を意味するでしょうし、力を制御できたなら、豊かな再建と発展もありえそう。
また、全ての人類が肉体を捨て高次の生命へと進化した場合、それまで築き上げた文明も無意味になり、物体・空間・時間を超えた未知の価値観の元で、新たな世界が築かれることになります。
ハッピーエンドもバッドエンドも、それを超えた異次元のエンディングも、視聴者の解釈次第と言うワケです。
・全ての生命にアキラの力が宿るなら、人間以外の生き物も覚醒する可能性アリ
・「誰にでもアキラの力はある」→ 日本が舞台なだけに八百万の神的な発想?
・妄想が過ぎると頭がパンクするのでほどほどに
原作も合わせて読みたい
原作は全6巻の大作なので、映画は尺に合わせて、細かい設定を省いたようです。
そうなると、漫画を読まないことには「AKIRA」の全貌も見えてこないかもしれません。
とは言え、値段がお高い!中古市場で値崩れする様子もなく、中々手が出ません。
私の中の力が覚醒すれば、中身を読み通せるのですが…まあ、そんなことは一ミリもないので、暫く映画の余韻に浸ることにします。

何度見ても圧倒的にオモシロイ!映画だけでも充分楽しめます!
【追記】
いくらなんでも…と思うかもしれませんが、膨張した鉄雄は、どうしても日本神話「古事記」に登場するヒルコの神(蛭のような子 → 蛭子神)と重なります。
・ヒルコは手足の不自由な異形の赤子
・イザナギとイザナミによって川に流される
・ヒルコは穢れ(けがれ) → 水で清められる
・後に七福神のゑびす様として復活
【膨張した鉄雄】
・グロテスクな赤子(ほぼ肉塊)
・アキラの光に飲み込まれる
・精神生命体に転生
穢れの対象となったヒルコは川で清めれ、ゑびす様として復活。鉄雄は光に飲み込まれ、精神生命体に転生。
私には、邪神と化した鉄雄がアキラの光によって浄化されたように写るのです。
いずれにせよ、大友克洋さんが幻魔大戦の作画を担当したことから、何らかの神話が影響している可能性も充分考えられます。