なんの前ぶれもなく始まったWEBアニメ「とーとつにエジプト神」。
どう見てもエジプト神話がモチーフ。
それ以外は謎。
負けていられません。こちらも一切の前置きなく解説します。

とーとつに行くぜ!
そもそもエジプト神話って?
これが一口に説明するのが難しい。
なんせエジプトは広い。
あまりに広いもんだから地域によって神話もまちまち。
ザックリわけると、こんなカンジ。

主な創世神話 | 主 神 |
ヘリオポリス神話 | 太陽神アトゥム |
メンフィス神話 | 創造神プタハ |
ヘルモポリス神話 | 知恵の神トト |
テーベ神話 | 戦の神モントゥ 太陽神アメン |
国土の97%が砂漠だから、残り3%のナイル川流域に人々も都市も集中。
神話も各都市で生まれました。
オシリス神話を抑えよう
数ある神話の中でも一番メジャーなのはオシリス神話。
ヘリオポリス神話由来の物語で、古代エジプト人の価値観や死生観を作った重要なストーリー。
ここでは概要だけ抑えます。
・古代エジプト人の死生観を描く
(→死・復活・冥界の王について)
・即位したファラオの正統性を主張
動物は偉大なのだ
動物を神聖視した点も非常にユニーク。
トキ、ジャッカル、牛など、人間の能力を越えた力=神の力と考えていたようです。
地方ごとに様々な動物が守護神として崇められ、崇拝されていました。

(右)ハヤブサの神ホルス
引用:ナショナルジオグラフィック「古代エジプト文明」

日本の八百万の神(やおよろずのかみ)に近い発想。
日本でもお馴染みのフンコロガシは、古代エジプトではスカラベ。再生の神や太陽神と同一視されました。
・フンを転がす=太陽を運ぶ → 太陽神

引用:村治 笙子・仁田 三夫「古代エジプト人の世界」
「とーとつにエジプト神」のキャラクター解説
ちょっと駆け足気味でした?
大丈夫。大事な点は2つだけ。
・オシリス神話を読むべし
・動物さんむっちゃステキ
上記を踏まえて、ようやくキャラクター解説。とーとつに行きまっせ!
アヌビス

墓地を守る冥界の神様(野犬がエサを求めて墓場をうろつく様=死者を守るように見えた)。
主な仕事は2つ。
・ミイラ作り
・魂の計量と記録
実はバラバラにされたオシリスをつないで、ミイラとして復活させたのがアヌビス。
その後、冥界の王となったオシリスのサポート役に就任。死者の魂を計量し、天国行きを決める重要なポストを任されます。
トト

ヘルモポリス神話で生まれた知恵の神様。
世界初の計算や、宇宙の法則を作りあげるなど、この世の秩序を解き明かした超ド級のエリート神。
メジェド

「死者の書(死者が来世で物活するための呪文書)」のみに登場する謎の神。
メジェドの意味は「打ち倒すもの」。
主な特徴は3つ。
・布のようなものでスッポリ
・冥界の王オシリスの家に住む
・目から光線を放って敵を打ち倒す
これだけ並べても意味不明。謎過ぎでしょ。
バステト

古代エジプト人にペットとして飼育された猫はネズミや毒ヘビ退治に大活躍。
死後はミイラとして復活を願うまで愛され、やがて崇拝される頃には、猫の神・バステトが誕生しました。
ちなみに手に持つ「シストラム」は赤ちゃんをあやすガラガラ。
豊穣と音楽の神様でもあったのです。
セト

ジャッカルの頭を持つ憎まれ役。
オシリス神話では散々悪者扱いされたセトですが、ホルスとの戦いに敗れたあとは、砂漠や外洋を守る異民族の神様に。
砂漠の商人には守護神として崇拝されました。
ホルス

おなじみオシリス神話で大活躍したハヤブサの神様。
さらに王権のシンボルであり守護神。
そもそもオシリス神話は、ホルスがエジプト統一の正当性を主張するもので、ファラオ(エジプトの王)はホルスの化身と考えられました。
ラー

全ての神の最上位に君臨する太陽神で、めっちゃエラい。
ゆるキャラにして良いものか迷うほど。
仕事は天空の船に乗って太陽を運ぶこと。
夜には冥界に乗り込み、大蛇アペプ(アポピス)と戦うことも日課。
アペプ(アポピス)

太陽神ラーのライバル的存在。
何度でも復活してラーの行く手をふさぎ対決を挑む(そして倒される)。
生と死の繰り返しは、ナイル川の平穏と氾濫、もしくは脱皮の繰り返しを表しているとも。
クヌム

「創造するもの」を意味する神様。
ヒツジの持っている強い生殖能力が、創造の神のモチーフに。
ろくろで人間をつくる姿が印象的。
サ・タ

メジェドと同じく「死者の書」に登場する蛇の神様。
二本足は蛇へと生まれ変わった死者の足。
アペプと違って悪さをすることはありません。
ウェネト

ちょっと珍しいウサギの神様。
俊敏なスピードが破滅や破壊を回避するイメージと結びつき、神としてまつられました。
どちらかと言えば、マイナーな存在。
オッター

こんな神様いた?
ウェネト同様、かなりマイナーどころか、そもそも神様でもありません。
元ネタはカワウソ。
前足をたたんで立ち上がった姿が、太陽神への礼拝に見えたようです。
セベク

ワニの神様。
長らく恐ろしいイメージが先行していましたが、第12王朝末期からセベクの名前を冠したファラオが登場(セフェルウセベク女王など)。
ワニの強いイメージと王様の威厳がピッタリ重なったあとは、ナイル川の守護神になりました。
イマジネーション爆発!厨二過ぎるエジプト神話の世界
すっかり古代エジプトにハマってしまった管理人。それもそのはず、とにかく世界観がスバラシイ。
・「死」をハッピーに捉える
・自然・動物などを神聖視
・物事に柔軟で全てを受け入れる
「とーとつにエジプト神」のキャラクターは白と黒を基調にしたデザインで、「葬儀」や「死」と言ったイメージを思い浮かべるかもしれません。
ところがエジプト神話では、その「死」ですら人生のイベントに過ぎないのです。
むしろ亡くなってからが本番。生前の善行で天国行きが決まるため、みんな悪さをしません。
当時の平均寿命が35歳前後だったので、短い人生よりも永遠の死後にウェイトが置かれたのでしょう。
また、砂漠と海に囲まれた国土も絶妙。他国から侵略されず、自国の繁栄に専念することで、高度な文明を築きました。
そしてその文明の礎になったのは、なんと言ってもナイル川。
流域から離れることは砂漠での「死」。ナイル川への恩恵は、そのまま自然や動物への神聖視につながりました。

(右)クヌムとして崇拝された羊のミイラ
引用:フランソワーズ・デュナン「ミイラの謎」

古代日本のアニミズム(自然崇拝)に似てるね!
日本人に共通点も多く、親近感しか湧きません。
ついでに厨二ワードも刺さること刺さること!
・オベリスク(記念碑)
・ネクロポリス(死者の都)
・ラムセス2世(最強のファラオ)
・コフィンテキスト(棺に刻まれた呪文)etc.
さすがに個人的な趣向ですが、これらのワードを見るたび大はしゃぎ。

え!なになに!どゆこと!
好奇心が止まりません。
ここまでお付き合いいただいた方にも、神話のユニークな一面が伝われば幸い。ブログ冥利に尽きます
お互い豊かな世界に浸って、イマジネーションを爆発させましょう!

3000年の歴史には学びと驚きがイッパイ!